臨床、行政、研究。
三者の架け橋になることを目指して事業連携推進室・医師 - 川田

テクノロジーを活用し、医療ヘルスケア分野の課題解決を目指すメドレー。しかし、ステークホルダーが多く課題が複雑なこの分野において、変革は一朝一夕に成し遂げられるものではない。

良質なプロダクトやサービスを着実に生み出すのはもちろん、それらが受け入れられる社会の土壌、つまり「文化」をつくりあげていくことが欠かせない。その文化づくりを担うキーパーソンが、事業連携推進室の川田だ。

川田は医師として前期研修を終了後、厚生労働省に医系技官として入省。臨床現場と行政という異なる場所から、医療の課題を見つめてきた。そのキャリアを活かし、今挑戦する医療業界の文化づくりとは。

現場から厚生労働省へ。抱き続けた予防医療への課題意識

人の役に立つ仕事がしたいと、医師への道を歩んでいた川田。漠然と臨床現場で働くことを想像していた彼女は、医学部時代に受講したある講義を機に、その後向き合い続けることとなる課題意識を持つようになった。

「疾患リスクのある人に予防的処置を施す場合と、発症後に治療を行う場合、どちらの方が費用がかかるかを比較する医療経済学の講義でした。話を聞く中で、ある違和感を覚えたんです。病気の発症を予防して健康に過ごす“幸福”は、お金には換算できません。金銭的理由によってではなく、そもそも社会は予防医療と向き合うべきではないかと感じたんです」

この時芽生えた予防医療への関心は、研修医として働き始めてからも消えることはなかった。

「医師として働くなかで、患者さんから感謝される機会も多くなり、やりがいも感じていました。しかし、『感謝される状況になる前にできることがある』と、より強く思うようになっていったんです」

結果、臨床の現場を離れることを決意。予防医療に関する制度設計や運用により深く携わるべく、厚生労働省でのキャリアをスタートした。

最初に取り組んだのは、難病患者の医療費助成制度の運用だ。入省したその年度に、助成の根拠となる難病法が国会で成立。川田は、申請方法の設計から、患者や医療機関への周知に至るまで、制度の円滑な立ち上げのために奔走した。

その後、健康局結核感染症課に異動。課題意識を抱いていた予防医療に携わる機会も得た。感染症の啓発活動や薬剤耐性の防止施策など、様々な制度の設計や整備に取り組んだ。

「自分の携わった制度が、患者さんの不安を緩和し、健康的な生活の基盤となっていく。その実感を得られる厚生労働省の仕事はやりがいのあるものでした」

オンライン診療による、予防医療への期待

医系技官として着実にキャリアを積む中、川田は興味本位で参加したマッキンゼーの会社説明会で、当時在職していたメドレー代表取締役医師の豊田に出会った。その場では、医療の課題に対しマクロな視点で向き合う者同士意見を交換するにとどまったが、その後、厚生労働省での仕事に邁進する中で、ある時豊田から「仕事について相談したい」と声をかけられた。その際に語られた、『CLINICSオンライン診療』の保険者や企業単位で行う禁煙外来での活用事例に、興味を持ったという。

「喫煙は様々な疾患の原因となります。予防医療の観点から見て、禁煙外来がとても重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。しかし、遠方に住んでいたり、忙しくてなかなか通院できなかったりと、特に症状がない人が通院を継続には様々な障壁がある。その点、オンライン診療は、通院のハードルを下げてくれます。しかもそのプログラムを職場を通じて広めるそのインパクトは計り知れないと感じたんです。

加えて、予防だけでなく、遠方から専門の先生を求めて受診する患者の助けや、医療機関への相談を躊躇している様々な悩みを抱える人の助けになるに違いないと、大きな可能性を感じました」

特に、職場を通したアプローチであれば、働く人やその家族にも情報が届く。健康管理に関心のない人も興味を持つきっかけになるかもしれない。

そう感じていた中、後日豊田から「CLINICSを活用した禁煙外来の普及を手伝ってほしい」と声をかけられた。その時はじめて、川田は「自分で取り組んでみたい」という気持ちがあることに気づいたという。

「厚生労働省での仕事はとても充実していました。一方、公的機関ゆえに公平性を重んじなければならず、特定の人を対象としたアプローチはとりづらい。実現できる制度の限界も感じていました。また、優れた公的制度があっても、その情報にアクセスできない人が多い。その現状を打破するには民間からのアプローチが欠かせないと感じていたんです」

メドレーなら、厚生労働省とはまた違った角度から、自分が思い描く予防医療を実現できるかもしれない。そう考え、入社を決意した。

臨床現場、研究機関、行政の三者をつなぎ、情報格差やすれ違いを防ぐ

現在、川田が担うのは、臨床現場、研究機関、行政の三者をつなぐ役割だ。

臨床現場では、目の前の患者を最優先に向き合わねばならない。そのため、制度の変更や最新の研究結果へのキャッチアップが後手に回ることもある。その最新情報や取るべき対応を分かりやすく伝える。

一方、行政や研究機関は、「臨床現場で何が起きているか」が見えづらくなる。そのため、オンライン診療システムの活用事例や実際の効果に関するデータを提供。現場の実情に基づいた制度設計や研究が行えるような土壌づくりを行なっている。

「『良い医療を届けたい』という想いは三者に共通しています。ですが、所属する組織が違えば、持っている情報も考え方も異なる。三者間の情報格差やすれ違いが、医療ヘルスケア分野の課題解決を妨げてしまう可能性もあります。間に入り、その媒介者となることで『良い医療を届けたい』という各々の想いをつなげていくことが、私の役割だと考えています」

それと同時に、この三者が抱く想いや考えを、メドレー社内へ伝えるのも責務の一つだ。

「臨床現場、行政、研究機関のうちのどこか一つのステークホルダーにとってベストなプロダクトやサービスが、他のステークホルダーにとってもベストだとは言い切れません。それぞれの意見を統合し、うまく落とし込んで初めて、使ってもらえるプロダクトやサービスになる。だからこそ、社内への情報共有にも力を入れています」

グランドデザインを描き、同じ方向を見据える

メドレーに入社してから3年余り。当初130名ほどだった社員は、現在400名を超え、事業規模も大幅に拡大した。2019年12月には上場も果たし、会社としては着実に次のフェーズへと進んでいる。

「入社当時、まだオンライン診療は一般的ではありませんでした。しかし、2018年4月から診療報酬に『オンライン診療料』が新設されるなど、徐々に医療ヘルスケア分野におけるテクノロジー活用が進みはじめています。最近では、医師や看護師の友人に『CLINICS』の活用事例について聞かれることも増え、確実に風向きの変化を感じています」

社会にテクノロジーが普及し、臨床現場からもその活用を求める声が徐々に高まりつつある。その声を後押しにして、今後、さらにスピード感を持って医療課題の解決を進めていくために、川田が重要だと考えるのは“ビジョン“だという。

「自社のプロダクトやサービスを社会に広く知ってもらうことは重要です。しかし、そのツールを使ってどんな医療を、そしてどんな社会を実現していきたいのか、その先のビジョンを描き、医療業界全体に提示していくことが何よりも大切だと考えています」

目指す世界観が社会に共有されているか否かで、プロダクトやサービスの広まり方、使われ方も変わる。その差が、未来に実現されるであろう社会を大きく左右するはずだ。川田はそう語る。

「プロダクトやサービスのリリースに留まらず、医療業界全体が一丸となって目指せるビジョンを描いていく。その先に新たな医療文化を作りあげる役割を、担っていきたいと思います」

Edit,Interview: Kazuyuki Koyama
Text: Miki Okamoto
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Date: FEB 2020  
本記事の組織名、内容等は取材当時のものです
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