未踏の課題解決は、困難で当然。
社会に貢献するデザインの力デザイナー - 前田

ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ。この3要素を有機的に連動させる人を、それぞれの頭文字を取り『BTC型人材』とよぶ。

デザインファーム『Takram』が提唱するBTCは、メドレーのデザインチームが大切にしている素養だという。そう話すのは、インキュベーション本部で新しいプロダクトのデザインを一手に引き受ける、デザイナーの前田だ。

なぜ、メドレーにはBTC型人材が必要なのか。その理由は前田のバックグラウンドと強く紐付く。前田のキャリアと、いま求められるデザイナー像を伺った。

より事業に近いところでデザインを、と事業会社へ

前田が、デザイナーのあり方を考える上で大きな影響を受けたのが、前職での経験だ。デザイナーとして、数社の制作会社でキャリアを積んだ前田。より事業に近いところでデザインをしたいと考え出会ったのが、リブセンスだった。

当時は、上場に向け成長を加速させる、勢いを持ったタイミングだったという。「20代前半の社長が上場を目指すと豪語している。勢いを感じましたね。ここなら事業会社として多様な経験が積めるし、自由にやれると思い入社しました」

リブセンスは新たな事業を次々と作っては試していた環境だった。前田はその中で、多種多様なサービスのデザインを経験。事業におけるデザインの担うべき役割を自身の中で深めていった。「新たなサービスを作るということは、新たなブランドを作ることです。サービスごとに最適なブランディングを考え、デザインに落としていくサイクルを繰り返せたのは、とても貴重な経験でした」

デザイナーとしてのあり方

デザイナーとして充実した経験を積む一方、前田はデザイン部の部長として、マネジメントにも尽力した。開発組織が大きくなるタイミングで、デザイン部が立ち上がり、部長に抜擢。そこからは、デザイナーとしての自身の成長と、チームの成長の双方の最適解を模索するようになった。

「採用や評価等、手放せない部分は手元に置きつつも、積極的にチームメンバーへ権限委譲をしていきました。たとえば、アートディレクションに関心のあるメンバーには、その領域のディレクションは任せる。自分で抱えすぎず、各々の得意領域や志望する方向性を活かせる環境を整備したんです」

デザイナー同士の関係だけでなく、事業に関わるエンジニアやビジネスサイドとのコミュニケーションも活発に行った。事業に価値を提供できる存在であるためには、他の職種とのコミュニケーションが重要だと考えた。この頃から、前田はデザインだけでない視点の重要性を意識するようになった。

創業者の想いが文化を創る

その前田が、メドレーと出会ったのは“医療”がきっかけだった。前職で、前田は医療情報サービスの立ち上げに携わる。その中で、医療業界が抱える課題を痛感、誰もが避けては通れない問題だと強く感じたという。

「医療サービスに携わる中で、医療の課題が徐々に自分事化されていったんです。漠然と『遅かれ早かれ、より深く関わりたくなるかもしれない』と思いました」その予感は、程なくして現実になる。

同僚だった平山が、メドレーのCTOへと転職。オンライン診療アプリ『CLINICS』を立ち上げるにあたり、前田にデザインを依頼してきたのだ。最初は、単にデザインを手伝うくらいの気持ちだった。しかし、その中で目にしたコーポレートサイトの代表の言葉に、前田は強く心を打たれる。「そこには、代表二人の言葉で、業界の課題感からサービスをやる意義まで、熱い文章が書いてある。ここまで自分たちの思いを具体的に伝えながら、ひとつの事業ドメインにフォーカスして軸が通った事業展開をしていることに感銘を受けました」

前田自身、前職でCIに携わり、会社のビジョンの重要性を強く感じていた。「創業者の想いが、会社の文化を創っていく。そこが自分に合うか否かはとても重要です。ここでなら医療にしっかりと向き合って仕事ができると思ったんです」

メドレーにこそ求められる「BTC」という指針

これまでの経験も踏まえ、前田はメドレーにおける理想のデザイン部のあり方を考えた。その中で、デザイナーに求める要素を整理。この時核に置いたのが、BTCだった。

「事業会社はエンジニアやビジネスサイドとのコミュニケーションが鍵になります。各領域のスペシャリストと良いコミュニケーションを取るために、デザイナーはテクノロジーもビジネスも理解する必要がある。ゆえにBTC人材を目指すべき姿に据えました」

前田の考えが、メンバーに浸透するのはさほど時間がかからなかった。「幸い今のデザイン部は、皆優秀でバランスが取れているので目標とするBTCの方向性をすぐに理解してくれた。各々が自律的に動き、エンジニア、ビジネスサイドとも良い関係性を築いてくれていました。」

「BTC」は「STC」へと進化する

組織作りにも力を入れる一方、前田はデザイナーしての成長も大切にしている。「たとえ50歳になっても現役で手を動かし、デザイントレンドを追い、自分のスキルをアップデートしていける人であり続けたいという思いがあるんです。サッカーでいう三浦知良選手みたいな感じですね。本来彼の年ならコーチングや監督をやる。それでもプレイヤーとして進化し続けることにこだわるのは、とても素敵だなと思うんです」

自身の成長には、「デザイナーとしての価値観」を共有できる組織づくりも欠かせないと前田は考える。「デザイナーとしての価値観」は狭義のデザインに関してだけではない。事業や、社会との関わり方も視野に入れ、思考を深め続けている。

「ある時、メドレーの場合BTCよりも、さらに広い視野を目指していることに気づいたんです。我々が挑む医療領域は、事業拡大のためではなく、社会のために良いものを作らなければいけない。意識すべき先は、ビジネスだけではなく、ソサエティ。つまり、BTCではなくSTCなんです」前田はこのSTCのマインドへ意識が傾いていったのは、開発本部のマインドセットが起点にあった。

『メドレーは社会の公器である。成果の向き先は、自己顕示でもチーム成長でもなく、社会や人の課題に貢献すること。パブリックマインドを持って価値を出し続ける。未踏の課題は困難で当然。社会に貢献しよう』この言葉こそが、メドレーの求めるデザイナー像を表している。

Interview, edit: Kazuyuki Koyama (weaving inc.)
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Date: OCT 2018  
本記事の組織名、内容等は取材当時のものです
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